かねてより「万能理論」は、科学の発展を阻害するものとして悪名高い。
歴史上、代表的な万能理論は“神様”である。
地震や洪水などの天災が起きても起きなくとも、後から「それは神のおぼし召し」とすれば、
つねに説明が可能だ。
しかし、天災が起きるのか起きないのかは“神様”が教えてくれれば別だが、
一般に予測がつかない。
大地震で礼拝堂が崩壊して信者が死亡する事故が何度も発生しているが、
「それも神のおぼし召し」なのだろうか。
一方、科学は天災の予測に挑戦して一定の成果を得ている。
必ずしも確実に予測できるわけではないが、地殻変動や気象現象の構造がモデル化され、
確率的な予報がなされている。
またその精度は、失敗を積み重ねた経験を通じて徐々に改善している。
もし「すべては神のおぼし召し」ならば、地殻や気象を究明する科学者の努力には
なんの意味もないとなり、科学の発展はままならなかったであろう。
皮肉なことに、失敗をしない“神様”は予測に使えないのだが、
失敗を重ねる経験的科学は進歩し、予測に役立つのである。
万能理論が科学的な究明をストップさせる例をもうひとつ紹介したい。
“幽霊”の存在である(詳しくは石川幹人『「超常現象」を本気で科学する』
(新潮新書、2014)を参照)。
“幽霊”はある程度の頻度で目撃報告があるので、経験的科学の究明対象になりえる。
目撃パターンの調査を通じて“幽霊”の特徴や性質を明らかにできるからである。
その目撃報告では、「誰もいない隣の部屋から壁をノックする音がして、
行ってみると白いベールをまとった怪しい影がスーッと壁を抜けて行った」
などの標準パターンがある。
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