>>2 誰もが「望ましい死に方」として最初に思い浮かぶのは、老衰死でしょう。
十分に長生きをして、最後は眠るように亡くなる。
なんとなく安らかなイメージがあるのでしょう。
しかし、実際の老衰死はそんなに生やさしいものではありません。
私は在宅医療で、老衰のため息を引き取った患者さんを何人も看取りましたが、
老衰死は死ぬまでがたいへんなのです。
それまで元気でいて急に衰えるわけではなく、死のかなり前から全身が衰え、
不如意と不自由と惨めさに、長い間、耐えたあとでようやく楽になれるのです。
視力も聴力も衰えますから、見たり聴いたりの楽しみはなく、
味覚も落ちますから美味しいものを食べてもわからず、
それどころか食べたら誤嚥して激しくむせ、
そのたびに誤嚥性肺炎の危険にさらされ、
腰、膝、肘とあらゆる関節痛に耐え、
寝たきりになって、下の世話はもちろん、清拭や陰部洗浄、
口腔ケアなどを受け、心不全と筋力低下で身体は動かせず、
呼吸も苦しく、言葉を発するのも無理というような状況にならないと、死
ねないのが老衰死です。
メディアではこういうイヤな事実はめったに伝えません。
もちろん、みんながみんなそうなるわけではなく、
なかには安らかに息を引き取る人もいるでしょう。
しかし、その理想的な状況だけをイメージしていると、心の準備ができず、
「実際の老衰がこんなに苦しいとは」と、余計な嘆きに苛まれる危険性は大です。
返信する