みんかぶプレミアム特集「規制をなくせ、税金下げろ」第5回は経済学者の竹中平蔵氏が「岸田政権の期間限定減税政策は何の意味もない」と切り捨てる。
たしかに国民生活は苦しくなっています。実質賃金が下がっているからですが、ただそんなのは当たり前の話です。円安で今まで100円で買えていたものが200円払わないといけなくなったからです。
物の値段が上がれば、我々の購買力が吸い取られるので、その分生活レベルが落ちてしまいます。そして、同じことが今海外で起こっているのです。国民は困っているでしょう、
しかしはっきりいって「海外ほどではない」のが現状です。日本の物価上昇率は現在3%ほどですが、IMFが10月10日に発表した世界経済見通しでは2023年の海外の消費者物価上昇率は6.9%と予測しています。
こういうと厳しく思われるかもしれませんが、はっきりいってこれは日本人が甘受しなくてはいけないレベルの話です。もちろん生活困窮者に対する支援は必要ですが、生活が大変だといっても、
全体としては海外に比べれば程度の低い話で、非常事態でもなんでもないのに非常事態のようにふるまいお金をばら撒いているのが今の日本です。
そもそも日本の経済実態はそんなに悪くありません。輸出関連企業では最高益を出す企業も出ています。
逆に世界では逆風が吹いている国も多く、正直日本にはささやかな追い風を受けているような状況と言えます。これに対してアメリカなどは「もっと日本しっかりやってくれ」と思っているのです。
かつて日本の半導体が強かった時にアメリカは日本の半導体を抑えようとしていました。しかし、今、アメリカは日本の半導体を強くしようしてくれてる。
だからこそIBMがラピダスと組んだのです。日本にそんな追い風が吹いているのだから、それを思いきり生かそうとすべきです。
まず減税って何かというと税金を払っている人に対して「もっと頑張ってください」とお願いする制度です。所得を稼いで税金を払っている人は資源をうまく使っている人なので、
そういう人たちにもっと頑張って動いてもらいましょう、と。ところが、今回の減税は「国民が生活に困っているから」という理由で実施されます。
でも本当に生活に困っている人はそもそも税金をそんなに払っていなかったり、免除されたりしています。そうなると今回の減税政策は何の意味があるのでしょうか。
そういった批判を受けた政府ですが、今度は「低所得者たちには給付する」というのです。それでしたら、最初から全員に給付すればいいだけの話で減税など必要ありません。
給付することに政策的には意味があるのです。給付とは「施し」です。施しは社会の安定のためには必要なことです。
今回の総合経済対策に関していえば、マクロ経済的には必要のない政策です。経済的にはやる必要はないが、政治的にやる必要があるならやっぱり給付をすればいい。そうしたほうが実施コストもかかりません。
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