昭和50年代の三重県熊野市での話です。
駅前の自動販売機でジュースを買っていたら、
「牛乳瓶の底のような分厚いレンズの黒縁の丸眼鏡」をかけて「唐草模様の風呂敷包み」を背負っているという、
漫画やコントでしか見たことがない、あまりにもステレオタイプな“田舎者”の格好をしたおじさんが、
そんな私の行動を不思議そうに見つめていました。
で、自販機から出てきたジュースを飲み始めると、そのおじさんがおずおずと近付いてきて、
「あのぅ~… もしかして、この機械にお金を入れると、“飲み物”が出てくるんですか?」
という衝撃的な質問を繰り出してきました。
予想だにしなかった問いかけに、「???」「何者だ!?」「現代の日本に」「こんな人がいるわけない」
「からかわれてる?」「それとも十津川村の山奥とか」「とんでもない田舎から初めて出てきた人で」
「本当に生まれて初めて自販機を見たのか!?」などと私の脳のCPUがグルグルと高速演算を始め、
過負荷で危うくフリーズしそうになりながらも、かろうじて「は…はい、そうですよ」と答えると、
「へえぇぇぇ~!!…便利な物ができたんですねえぇぇぇぇ~!!!」
…と、心底驚いて感心したような表情を見せた後、見よう見真似でおっかなびっくり自販機に硬貨を投入し、
出てきたジュースを感慨深げに見つめてからおずおずと飲み始めました。
あまりにも信じられない光景に、「もしかしたら素人相手のどっきりカメラか何かか?」と疑って、
周囲にTVカメラが無いかキョロキョロ見回してしまいましたが、当時そんな番組はなかったはずだし、
たとえあったとしても、わざわざ人の少ない地方にまでロケには来ませんよね…
なかなか信じてもらえないとは思いますが、神に誓って実際にあった出来事です。
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