精神疾患のなかでも、特に「うつ病」や「躁うつ病」には、
(1) 正しく現実を認識する力(リアリズム)
(2)逆境からの反発力(レジリエンス)
(3) 他者との共感力(エンパシー)
(4) 創造力(クリエイティヴィティー)
…という4つの能力を高めるケースがしばしば見られる。
シャーマン将軍(南北戦争の英雄)、リンカン大統領、テッド・ターナー(CNN創業者)、
チャーチル首相、キング牧師、ガンジー、ローズヴェルト大統領、ケネディ大統領、
そしてヒトラー…のように、危機に直面しときに超人のような指導力や行動力を発揮した
リーダーたちの多くが、軽度の「うつ病」や「躁うつ病」とも呼べる気質を備えていたのは
決して偶然でなく、むしろその気質ゆえに歴史的英雄として名を残すようなリーダーに
なれたのだろう。
いわゆる「健常者」に比べて、躁的な人は創造性やレジリエンスが高いことが多い。
同様に、うつ病の人は現実的で共感能力が高い。
平均的で健康なリーダーにもそうした能力が無いわけではないのだが、
危機的状況において求められる高い要求水準は届かないのだ。
たとえば、チャーチルと同時代の英国の政治家であったネヴィル・チェンバレンは、
精神的に健康な「正気の人」であり、平時においては優れた政治だった。
しかし、彼が精神的健常者にありがちな楽観性からナチスドイツへの宥和政策を行ったために、
ドイツに軍事力を増大させる時間的猶予を与え、「英国が実力行使に出るかもしれない」という
危惧を拭えていなかったヒトラーに「賭けに勝った」という自信を与え、「侵攻を容認した」
という誤ったメッセージを送ることになった。
結果的には、チェンバレンとは対照的に躁うつ病を抱え「精神に不安定」と評価されていた
チャーチルが、うつ状態がもたらす優れた現実認識能力(抑うつリアリズム)によって、
暴走を始める前のヒトラーの本性いち早く見抜き、英国を大戦時の危機から救った。
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