
Q:なぜ、被害者を叩く人がこんなにも大勢いるんですか? 辛い目に遭った被害者を叩くなんて、私には理解できない!
A:「善行は報われる」「悪人には必ず罰が当たる」「努力すれば成功する」…
誰もが無意識に考えている、こうした“公正”な世界観を「公正世界仮説」といいます。
仮説ではなく信念、誤謬(ごびゅう)と呼ばれる場合があり、実際のところは数ある
認知バイアスの一つに過ぎません。
公正世界仮説が槍玉に上がるのは大抵、セカンドレイプなどの被害者非難が出た時です。
何の落ち度もない人が犯罪などの被害に遭ったり、多くの人に恨まれる程の悪人が
のうのうと暮らしていたり、現実はお世辞にも“公正”が貫かれているとは言えません。
こうした「公正世界仮説」を揺るがす諸々に出くわすと、「被害者にも落ち度があった」
と辻褄を合わせて精神の安定を図るようになっています。
これが「いじめられる方にも原因が~」と言い出す心理としてよく語られる、
我々の知る「公正世界仮説」の姿です。
ただ、これは公正世界仮説が持つ多様な面の一つに過ぎません。
公正世界仮説を頭の中で飼っているからこそ、善い行いに取り組み、悪い行いを避け、
目標に向けて努力する、秩序ある人間としての基盤が成り立っています。
このような実験があります。
被験者には「今すぐ謝礼金を貰う」「90日後により多くの謝礼金を貰う」の選択肢と、
ドライバー過失の交通事故のニュースが伝えられました。
違うのは交通事故の被害者で、一方の群は罪のない一般市民が、もう一方は麻薬の売人が
巻き込まれたと吹き込まれています。
金額的には90日待った方が得なのですが、「無実の市民が事故に遭った」と聞かされた群は
「今すぐ」を選びやすい傾向が示されました。
「無実の人間が事故に巻き込まれた」と聞かされて公正世界仮説が揺らぐと、
「90日も待ってられない!今すぐ謝礼を!」となった訳です。
逆に、公正世界仮説が守られている群は「額が増えるなら90日くらい待つよ」となりました。
つまり、公正世界仮説は長期的な目標を見据えた行動を組ませ、「食うか食われるか」
の野蛮な価値観を持たないよう守っている側面もあるのです。
返信する