そして、無農薬・減農薬栽培の危険性にはもうひとつの側面があります。
植物は動けない代わりに体内で生態防御物質(天然農薬)を作っています。
野菜だって、なにも人間に食べられるために生きているわけではありません。
自分を守るために必死なのです。
生き残るために毒物を生成し、捕食者や病原菌に対抗しようとします。
このような防御化合物は、昆虫や細菌に選択的に有害というわけではなく、
人にも有害な場合が多いうえに、農薬よりもかえって発ガン性が高いと言われています。
ただし、生体防御物質は通常の生育には必要無いため、普段は量が少なかったり
作っていなかったりする例もあります。
そして、昆虫などに葉をかじられた段階で初めて、その破壊された葉にのみ
有害物質を作る反応が起こることがあります。
あるいは、かじられたというストレスを他の組織に伝えるシステムがあり、その信号によって、
昆虫などに有害な化合物の濃度を増やしたり、新たに合成したりします。
よく「農薬まみれで虫も食べないような綺麗な野菜は危険だ」という意見を聞きますが、
実際には逆で、人工農薬を使わなかったがために虫が食べている野菜の方が、
結果的に発ガン物質が増えてしまっていて危険な可能性が高いのです。
これが自然の摂理です。
野菜の品種改良の歴史は、野生種の持っていた毒物(天然農薬)の量を減らす歴史でもありました。
そのおかげで今日の私たちは比較的安心して野菜が食べられるようになりました。
その改良の歴史、すなわち「天然農薬を減らすこと」と「合成農薬の開発・改良」はリンクしています。
植物自身が作る天然農薬の量を減らすと、栽培野菜が病気に感染しやすくなります。
それを防ぐのが合成農薬です。
野菜自身が作るのを減らした天然農薬の分を、人が作った合成農薬で
補うことで近代農業は成り立っています。
前述のように、天然農薬には人に対する選択性はありませんから、
人にとって有害な物が多く含まれます。
一方、合成農薬には人に対する選択性があり、人には安全性の高い物が使われます。
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